イリノイ大学のカール・ウーズである。彼は、互いに近縁な生物はタンパク質のアミノ酸配列やrRNA配列が似ているという理論をもとに、1960年代後半から16S rRNA配列[1 3]を用いて生物の分類を始めていた。1976年、ウーズは同僚のウォルフからメタン菌のコロニーの提供を受け、そのrRNA配列が他の原核生物と大きく異なるという結果を得た。ウーズらはさらに研究を続け、翌1977年、この結果を元に原核生物をメタン菌(古細菌; Archaebacteria)とその他の細菌(真正細菌; Eubacteria)に分けるべきと主張した[4]。
1978-80年頃には、メタン菌もエーテル型脂質を持つことが分かり[7][8]、調査の結果、同じ脂質を持つ高度好塩菌と好熱菌の一部も古細菌に属すことが系統解析の結果明らかになった[9]。しかしながらまだ古細菌という分類群は広く受け入れられるには至らなかった。
1980年代以降、古細菌の研究が活発になり、この時期真正細菌と古細菌の差異を示す研究が蓄積された。1989年には重複遺伝子を用いることによって古細菌が真正細菌よりも真核生物に近いことが分かり[2][3]、さらに1990年には3ドメイン説が提唱された[6]。この際古細菌はユリアーキオータとクレンアーキオータの2界に分けられた。
一般的に分布の中心は他の生物が生息し辛いニッチに存在するとされる。実際に飽和に近い塩濃度や高温環境、低pHへの適応は他のドメインに比べ高く、他の生物が生育することができない飽和NaCl溶液やpH0以下の強酸、100°Cを超える環境にも分布する。例えば、Halobacteriumは20-25%NaCl濃度で盛んに増殖し、塩湖などの高塩環境で真正細菌を数で圧倒している。また、Picrophilusと呼ばれる古細菌はpH0(1.2M硫酸溶液に相当)で、Methanopyrus kandleri Strain 116は400気圧122℃で増殖が可能と報告された。Natronomonasの中には高NaCl、高温、アルカリの3つの極限環境に適応しているものもいる。
一方で、メタン菌と呼ばれる古細菌の中には、より温和な条件に分布するものも存在する。彼らは地球上で最も酸素を嫌う生物ではあるが、熱水噴出口や南極大陸の凍った湖などの極限環境のほか、水田や沼地、湖や海底沈殿物、人間を含む動物の消化器官など幅広い嫌気環境に生育している。
この他に、極限環境とはいいがたい通常の海洋や土壌、湖底沈殿物、南極海表層、海底下からも古細菌の16S rRNAや脂質が検出されることから、培養が困難で分離ができていないだけで、実際はかなりの広範囲に分布すると考えられている。特に海洋中では1 ml中におおよそ10万個の古細菌が存在し、細胞数当たりでは微生物の最大20%、またはそれ以上の古細菌が存在すると考えられる[10]。これら海洋性の種はThaumarchaeotaと呼ばれる新しい門に所属するらしい。Thaumarchaeota類は土壌などからも検出されており、どちらでもアンモニアを酸化するAOA(Ammonia-Oxidizing Archaea、アンモニア酸化古細菌)の割合が高い。検出量はアンモニア酸化細菌を遥かに上回ると報告がされており[11][12]、硝化作用に関して古細菌が重要な役割を果している可能性を示唆している。これら非極限環境に生息するものについても研究が進められている。
また、深海[13]、海底下[14]、地殻内には、それぞれ地上の全動植物量を上回る程の膨大な古細菌が生息している可能性が指摘されている。
なお、既知の高度好塩菌や好熱菌、メタン菌にしても培養が可能なのはごく一部であり、いまだ全容は明らかになっていない。予想される総バイオマスは全生物の数10%と見込まれている。記載種は全部で約300種(2008年2月現在)である。
古細菌は培養が困難な上、病原性も持たないため真正細菌と比較して人との直接的な関わりは薄い。よく知られた例ではメタン菌が人の腸内にも生息し、屁中に含まれるメタンを生成している。オナラに含まれるガスを生産するという事でメタン菌のイメージは余り良く無いのが現状であるが、水素を消費することで競合する硫酸還元菌の働きを抑え、むしろ臭いや発がん性物質の発生を抑制している可能性がある[15]。この他に、Methanobrevibacter smithiiが栄養吸収率の向上[16]、口腔内に存在するMethanobrevibacter oralisについては歯周病との弱い関連性[17]が指摘されている。しかしながら、体内におけるメタン菌の挙動は不明な点が多くまだよくわかっていない。
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腸内に存在するメタン菌はメタノバクテリウム科[18]が多く、この他にメタノサルシナ科、メタノサエタ科が存在する。これらはメタン醗酵にも利用され、汚水処理やバイオガスの生産に使われている。様々な問題を抱えてはいるが、メタン菌の産業上での利用価値は高い。メタン菌は地球上におけるメタン放出量の大半を占めており、地球温暖化にも関連して研究が進められている。
この他菌体を直接利用するものとしては、SulfolobusやArchaeoglobusが、それぞれ硫化水素、重金属の処理に期待されている。
一方、好熱菌性や好酸性の古細菌は熱や有機溶媒に対して耐性の高い酵素を産生するため遺伝子資源として有用である[19]。Pyrococcus furiosusやThermococcus kodakaraensisなどに由来するDNAポリメラーゼ(Pfuポリメラーゼ、KODポリメラーゼ)は、Taqポリメラーゼ(真正細菌Thermus aquaticus由来)に比べ複製正確性が高く、PCRに使用される。
他にもアミラーゼ、ガラクトシダーゼ、プルラナーゼ、セルラーゼなどの幾つかの酵素(Pyrococcusに由来するものが多い)が産業利用に向け研究が進められている。